現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
花粉症でくしゃみや鼻水が出るのは、鼻の奥の粘膜に花粉がつくことが原因。粘膜には「絨毛」という毛のようなものがびっしり生えていて、花粉などの異物をのどの奥の方へと運んで取り除く働きをしている。(「元気のひけつ つらい花粉症も鼻うがいでスッキリ」=朝日新聞2013年3月2日)
えっ、
じゅうもう【絨毛】小腸の粘膜、胎盤と子宮壁の接触面にみられる指状または樹状の突起。表面積を大にして消化ならびに吸収を容易にする。柔突起。(『広辞苑』第六版)
ほらネ! でも、これだけじゃもう一つ、ようわからん。説明不十分だよな。胎盤は、「消化ならびに吸収」とは関係ないんだから─。医学用語辞典を見てみよう。
【絨毛】villus 長さ1mm程度の粘膜表面の突起のこと。人体では胎盤と腸の2種類の絨毛がある。
胎盤の絨毛は、妊娠を継続させるのに必要なホルモンをつくり、養分を取り込み、胎児の発育とともに大きくなり、胎盤となる。
腸の絨毛は、小腸の吸収面を広くするためのものであり、その内部にはリンパ管や毛細血管網がよく発達していて、栄養物などが上皮を通じてこれらの毛細管内に入る。(『最新医学用語・薬剤辞典』)
─というわけである。では、鼻の奥の粘膜に生えている「毛」は?
「鼻粘膜には、線毛という細かい毛がびっしりと生えています」(『家庭の医学大事典』)。そうだ、線毛だった。
で、上掲の引用文はそのあと、こう続いている。
「異物を運ぶ速度は、大人で毎分2.5~9澄ただ、絨毛が生えておらず異物をどかすまでもっと時間がかかる場所もあるので、その時間を早めることが鼻うがいのねらいだ」─この文中の「絨毛」も、むろん「線毛」に直さなければいけない。
鼻粘膜や線毛の機能をもう少し知りたくて、解説本を二、三、拾い読みしてみた。こんなようなことらしい。
鼻から肺までの空気の通路=気道には、独特の清掃装置がある。
鼻の奥は薄い粘膜(鼻粘膜)でおおわれ、線毛が密生している。
鼻粘膜の下にある
鼻粘膜に炎症がおこると、粘液腺や漿液腺からの分泌物がふえ、鼻の中にたまったり、外のほうへ流れ出てくる。鼻水だ。
粘液にとらえられて包まれた異物は、
線毛は、直径1000分の1mm、顕微鏡でしか見えない。気道全体をおおい、1秒間に15回も前後に波打っている。この線毛の動きにのって、気管から咽頭へ戻された異物は、痰として排出されるか、のみ込まれて胃に入る。胃に入った異物は強い胃酸にやられて最期をとげる。
─というところで、「鼻うがい」。
上掲記事によれば、「手動式ポンプ」を用い1日2回、鼻を洗うと、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが軽くなるという。だが「やりすぎると粘膜の絨毛にダメージを与え、花粉を取り除く働きがかえって弱くなる恐れがある」と注意している。(ここも「絨毛」→「線毛」)
「(鼻うがいは)あくまで補助的なもの。まずはマスクや手洗いなど、鼻に花粉を入れない予防策につとめてほしい」と、「鼻うがい」を指導する医師も勧めている。