現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
へんずつう【偏頭痛・片頭痛】頭の片側だけに局限された激しい発作性の頭痛。(『広辞苑』第六版)。
片頭痛の専門医によると、『広辞苑』のこの記述は、まったくの誤解ではないが、正解でもない。一知半解といったところらしい。
じつは筆者も、片頭痛臨床の専門医、清水俊彦・東京女子医大脳神経センター講師の話を聞くまでは、広辞苑並みの知識しかもっていなかった。そのときのやりとりの一部を引用する。
清水 片頭痛って、どんな頭痛だと思いますか?
─文字どおり頭の片側がズキン、ズキンと痛くなる頭痛だ、と。
清水 ほとんどの人がそう答えます。
「片頭痛を一言で述べなさい」という問題を出すと、医学生ですら、「頭の片側だけに生じる頭痛」などと書きます。
しかし、片頭痛は、頭の片側だけではなく、両側でも起こるし、痛む部位があちこち変わることもあるのです。(雑誌『壮快』2008年6月号「名医に聞く」)
頭痛は、CTやMRIなどで検査をしても異常が見つからない(言い換えると、特定の病気を原因としない)「一次性頭痛」と、クモ膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、高血圧、急性緑内障、パニック障害など、いろんな病気の症状として起こる「二次性頭痛」に分けられる。
一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の三種類があり、慢性頭痛と呼ばれる。
「ところが、日本の現状を申し上げると、一般の開業医の先生は、片頭痛と緊張型頭痛をほとんど間違って診断されています」と清水講師は話した。
それもまぁ無理はないかと思う。というのは、日本の医師に最も多く用いられている医学辞典にも、こうあるからだ。
「片頭痛 頭の片側に限局して、発作的に頭痛が起こるものをいう。─以下略」(『医学大辞典』南山堂刊)
もっとも、別の医学辞典には、
「片頭痛 発作性、反復性に起こる頭痛で、部位は頭痛発作の初発時には片側性のことが多く─以下略」(『医学大辞典』医歯薬出版刊)と、正解に近い記述がみられる。
『広辞苑』はこちらも参照して、「多くのばあい頭の片側に生じるが、両側が痛むこともある」とでもすればよかったのかもしれない。