現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
私も二十代で肺結核をやり、人工気胸という胸の病気を八年患いました。(木下繁太朗=「壮快」1990年9月号)
健康雑誌の「ドクダミ」特集に寄せた解説のなかの文言である。
「人工気胸」は、1950年代まで行われていた肺結核の治療法だ。「胸の病気」ではない。
木下繁太朗先生は、漢方の篤実な専門医として知られた人で、私(丸山)も何度か親しく教えを受けたことがある。
その人がこんな幼稚なマチガイを書くわけはない。おそらく、これは口述の記事で、若いライターが、「人工気胸」と聞いて、「病気」だと思い込んだのだろう。いま、「気胸」といえば、もっぱら「自然気胸」という病気のことだからだ。
気胸とは、肺をくるんでいる胸膜に孔が開いて空気が侵入し、肺が圧迫された状態だ。かつては結核の病巣を鎮める目的で、胸壁から針を刺し、わざと気胸をつくる治療(人工気胸)が行われた。
ケガで折れた肋骨が胸膜を破ってしまうこともある。「外傷性気胸」という。
こうした外的原因とは無関係の気胸を自然気胸といい、多くは肺の表面にできた
軽症だと、体を動かしたときのみ息苦しさを感じる程度で、開いた孔が小さければ、自然に癒着して、治る。体を動かしたり、重いものを持ったり、大きな声を出したりせず、安静にすることが大切で、特に大きな声を張り上げるのがよくないそうだ。
しかし、肺が強く縮み、空気がどんどん多く漏れると、安静にしていても息苦しい。
気胸が起こった側の肺がつぶれるだけでなく、健康な肺まで圧迫される「緊張性気胸」という状態になると、一刻も早く専門医(呼吸器内科または外科)の治療を受けないと生命にかかわる。
自然気胸は、1980年代から確実に増え続けていて、喫煙や大気汚染の影響が指摘されている。一見、健康な若い(20代が最も多い)やせ型の男性に好発するといわれ、男女比はほぼ8:1だ。
特殊な例として、女性の月経周期に一致して起こる「月経随伴性気胸」がある。30~40代の子宮内膜症をもつ人に好発するといわれている。