現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
私、A型だから、生真面目で面白みのない女だって、よく言われるわ。(『相棒』第14話「貢ぐ女」=2007年1月24日テレビ朝日系放映)
私は九州の人間ですけん、ちょっと語気が荒かったりして…略…B型で短絡的なところもあって、本意が伝わらないところが……。(松本龍・復興担当相の辞任の弁=2011年7月5日)
いわゆる「血液型性格判断」に類するこの手の話は、年中そこらじゅうで耳にする。なんとなく(あるいは、けっこう)説得力があるように聞こえる。
だが、それはまことしやかなウソなのだ。
「血液型から性格が分かるとか、行動から血液型が当たるといった話に科学的根拠はありません」というのが、まともな専門家の一致した見解である。
血液型と性格が相関するという説は、1927(昭和2)年、古川竹二・東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大)教授の論文「血液型による気質の研究」に始まるとされる。教授は、家族、同僚、学生らにアンケートし、「A型=おとなしい、心配性、B型=世話好き、陽気」などと分類した。
ざっと半世紀後の71年、この古川学説をもとに、芸能人など有名人の例をたくさんあげて、俗受けする読み物に仕立てた能見正比古著『血液型でわかる相性』が、大ベストセラーになったのがきっかけで、血液型による性格分類が一般に広まった。
だからこれは日本人好みの「占い」のようなもので、その限りで話の種にする分には何ら不都合はない。
だが、これに確かな科学的根拠があるとして、例えば幼稚園で血液型別のクラス編成を行ったとか、企業の採用面接で特定の血液型は採用しないと言われた─となると、問題だ。
ある会社の社長は、仕事の実績に血液型による指数をかけて、社員の賞与を決めている。A型はもともと几帳面だから0.8、B型はマイペースなのに成果をあげられたから1.2倍……といった話を新聞で読んで、「B型はトクだなあ」と笑ったことがある。
しかし、同じ成果を上げて賞与に格差がつくのは不公平だ。当人にとっては笑いごとではない。なぜこの社長は「仕事には血液型など関係ないんだな」と気づかないのだろう。
血液型性格診断なんて偽科学だといわれても、「でも、自分の場合は当たっている」と思う人は多いだろう。その理由は、心理学では「バーナム効果」という理論で説明されている。これは、誰にでも当てはまるようなあいまいで一般的な性格を記した文章を、自分だけに当てはまる正確なものだと思い込む心理現象のことだ。
アメリカの心理学者フォアラーは、心理学専攻の学生に「性格診断テスト」を行い、回答を無視して、すべての学生に、同じ「診断結果」を示した。そして、それが「よく当たっている」と思う場合は5、「比較的当たっている」場合は4、と評価するように求めた。学生たちはその「正確な診断結果」に驚き、全員が5ないし4と答えた。
フォアラーが用いた「診断結果」は、スタンド売りされている新聞の占星術欄から星座を無視して、適当に抜き出してつなぎ合わせたものだった。
作家の松岡圭祐さんは、同じようなテストを、インターネットで行った。サイトを訪ねた約500万人の約9割が「当たっている」と答えたという。
なお、「バーナム」とは、だましの技にたけた興行師の名だそうだ。