現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
春とは名のみで二月ごろは一年中で一番寒いようです。寒いときは血圧が上がり易く、脳卒中や脳梗塞で倒れる人も多くなります。(東畑朝子「やさしい栄養学」=サンケイ新聞)。
脳梗塞には、脳塞栓と脳血栓という二つのタイプがあります。脳塞栓は、脳の動脈のアテローム硬化が進行し、ついには内腔をふさいでしまうものです。脳血栓は、脳以外の場所で起こっているアテローム硬化の部分から血液の塊(血栓)がはがれ、血流とともに脳に達し、アテローム硬化を起こして細くなっている脳動脈の内腔にひっかかって、ふさいでしまうものです。(『続家庭の医学』=小学館発行)。
脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりする病気だ。破れるのが脳出血(昔は脳溢血と言った)とクモ膜下出血で、詰まるのが脳梗塞だ。つまり脳梗塞も、脳卒中の一種なのだから、「脳卒中や脳梗塞」ってのはおかしい。「サプリメントや梅肉黒酢」というようなものだ。
─で、その脳梗塞には、おおまかに分けると脳血栓と脳塞栓の二つの病型がある。脳血栓は、脳の中の血管の動脈硬化がベースになって、血管が狭くなったところに血栓が詰まる病気だ。血管の内壁にコレステロールなどの脂質がどろどろのお粥のようにたまり(アテローム=粥腫(じゅくしゅ)という)、血栓ができるので、アテローム血栓性梗塞と呼ばれる。
一方、脳塞栓は、心臓の中でできた血栓が、脳まで流れてきて、脳の血管に詰まる病気だ。心原性脳塞栓症とか心塞栓性梗塞と呼ばれる。野球の長嶋さんやサッカーのオシムさんが発症したのが、これだ。
もうおわかりでしょう。『続家庭の医学』は、脳塞栓と脳血栓を取り違えたのだ。脳塞栓を説明した部分は、正しくは脳血栓のことで、脳血栓の説明部分が脳塞栓のことだ。ただし、「脳以外の場所で起こっているアテローム硬化」というのはウソ。心臓の中で血栓ができる原因はいろいろあるが、最も多いのは不整脈の一種の心房細動(心臓の上半部の心房が、正常の5倍を超える速さで不規則に震える状態)だ。
ところで、脳出血と脳梗塞を防ぐポイントは、血圧と脂質。正常な血圧とサラサラ血液を保つことだ。