現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
B型肝炎は、20年前から母子感染の予防として赤ちゃんにワクチンを打って大成功したので、若い方の感染者はいません。一方で、欧米からの新しいB型肝炎が日本で流行し始めています。性交渉で感染します。これを防ごうと、国民にワクチンを打つことが来年度から始まります。(「ウイルス肝炎と肝がんの理解のための市民公開講座」=朝日新聞2011年9月18日)
はて、一口に「国民」といっても老若男女1億2800万人もいるわけで、当方もその1人だが、「性交渉」なんてモノにはまったく関係ない(関係なくなった、または無関心な)男ないし女もたくさんいるのである。
いったい、「来年度」からはどのような人たちに、どのように、「ワクチンを打つ」のだろう? 不思議に思っていたら、4日後の9月22日の紙面に下のような訂正記事が掲載された。
訂 正 18日付「ウイルス肝炎と肝がんの理解のための市民公開講座」の特集記事で、「国民に(B型肝炎の)ワクチンを打つことが来年度から始まります」とあるのは、「ワクチンの接種は、医療機関で任意で受けることができます」の誤りでした。訂正します。行政によるB型肝炎ワクチンの接種はまだ検討段階でした。
疑問氷解─というところで、肝炎・肝がんの話。
毎年、3万人を超える人が、肝がんで亡くなっている。肝がんの原因の約80%はC型肝炎、約15%はB型肝炎、残りの約5%が酒その他である。
B型、C型、どちらの肝炎ウイルスも血液を通じて感染する。主な感染ルートは、母子感染、セックス、針治療、タトウー(入れ墨)、血液製剤、血液透析、ピアスの穴あけ、注射器の使い回しなど。
B型肝炎は、かつては母子感染と集団予防接種での注射器の使い回しによる感染が圧倒的に多かった。いまそれはなくなった。
C型肝炎は、血液製剤や輸血などによって広がった。こちらもいまはゼロ。ピアスやタトウーなどで起こる例が多い。
感染者数は、B型が約110万〜140万人、C型が約190万〜230万人と推定されている。国内最大級の感染症だ。
慢性肝炎はほとんど症状がないが(あってもだるさなど軽微)、およそ40%が肝硬変へ進み、肝硬変の80%が肝がんを発症する。
ウイルスに感染してから発がんまでは20〜30年。このあいだにしっかり手を打つこと。日本の肝炎・肝がんの治療成績は断トツの世界1位である。
まずは血液検査で感染しているかどうかを知る。感染している場合、インターフェロンなど抗ウイルス治療を受ける。
アルコールがよくないのは常識だが、もう一つ、鉄分の摂取にも気をつけよう。
肝臓には鉄がたまりやすく、鉄は酸化するときラジカル(不安定な状態の原子や分子。活性酸素など)をつくり、肝炎を悪化させる。
さて、ウイルス、性交渉、ワクチン─で、忘れてならないのは子宮
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交渉で感染する。多くの人は感染しても免疫によってウイルスは消えるが、感染が持続すると子宮頸がんになる。
子宮頸がんは「予防できるがん」だ。「自分も心配だけど、将来娘も心配」というお母さん、しきゅう、検診を!
(注・中学生の女子などを対象としたHPVワクチンの接種は、2010年4月から公費助成により行われている)。