現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
成人の失明原因のトップである糖尿病網膜症をはじめ、加齢黄斑変性、緑内障などは、ほとんど自覚のないまま進行します。(「サプリのはなし」=「つばさ」2009年3月号)
残念デシタ! 糖尿病網膜症が「成人の失明原因のトップ」だったのは、2004年までだ。古いデータを引用するときは「コレ、大丈夫かな?」と疑ってみるのが、ライター心得の一つだろう。情報にも賞味期限があるからだ。
糖尿病網膜症は、長い間、血糖値の高い状態が続くため、網膜(眼球の奥にある光を感じる部位)の微小血管が障害される病気だ。
1980年代初めからふえ始めて、88年の調査で中途失明原因の第1位になった。が、2005年の調査では緑内障にトップの座をゆずった。
そのときの厚労省発表による中途失明の原因疾患は、緑内障20・7%、糖尿病網膜症19・0%、網膜色素変性症13・7%、黄斑変性症9・1%、高度近視7・8%だ。
糖尿病自体は年々増加の一途をたどり、国民の5人に1人が「糖尿病予備群以上」だ。にもかかわらず、糖尿病網膜症による失明が抑えられているのは、「血糖コントロールなど糖尿病対策の成果といえる」と糖尿病の専門医が感慨深い面持ちで話した。それはちょっとした医学的事件だった。
緑内障は、眼圧(目の内部の圧力)が上昇するために視神経が圧迫されて委縮し、視野が狭くなっていく病気だ。いくつかの種類があるが、その大半は無症状のまま進行し、気づいたときには失明寸前という例がとても多く、「忍び寄る失明」といわれる。
緑内障とともに人口の高齢化に伴ってふえ続けているのが、加齢黄斑変性だ。
目をカメラにたとえると、フィルムに当たる網膜の真ん中にあるのが黄斑(黄色い色素の斑点)だ。最も感度のいい部分で、物を見る能力はこの一点に集中している。
加齢黄斑変性には、徐々に組織が傷んでいく委縮型と、異常な血管ができて水がにじみ出てくる滲出型がある。50代からふえ始めて60代、70代がピークになる。症状は片方の目から始まる。物がゆがんで見え、やがて見ようとする物の中心が暗くぼやけるようになる。
最悪の危険因子は、タバコと直射日光とされる。黄斑色素の主要成分─ルテインは、黄斑に最も有害な青い光から目を守る作用がある。忍び寄る失明を防ぐには、定期的受診と予防。帽子、サングラス、目によいサプリメントを─。