現在のページ:TOPページ > 医療ジャーナリスト丸山寛之氏が綴る辛口コラム「それ、ウソです。」
頭痛がするときは血管が拡張しているため、血管を拡張させる酒石酸エルゴタミンという薬が最初の選択として使われ、その次にアスピリンなどの鎮痛薬が使われます。(「どうしました 片頭痛」=朝日新聞1994年9月25日)
片頭痛の患者からの相談に対する、専門医の回答の一部だ。
「血管が拡張しているため」に頭痛がするのだから、「血管を拡張させる薬」を使うのは理屈に合わない。「血管を収縮させる薬」であるべきで、そのための第一選択薬が、当時は「酒石酸エルゴタミン」だった。
一読、これはおかしいと、気づくべき誤りがそのまま紙面に出てしまったわけで、あまりにもオソマツ。「どうしました? 朝日」ってところだ。
片頭痛は、いろいろ検査をしても原因が見つからない慢性頭痛─いわゆる「頭痛持ちの頭痛」の最も代表的な一つだ。
頭の片側(または両側)がズキン、ズキンと痛み、吐き気を伴ったり、視覚前兆といって、発作が起こる直前に目の前がチカチカしたり、ギザギザの光が走ったり、視野がぼやけたりする「
頭の血管が拡張することによって起こるので、血管の拡張を抑えるエルゴタミン製剤(カフェルゴット)を、頭痛が始まる直前に服用するのが、最良の治療法とされ、この薬は、頭痛が激しくなってからでは効きにくいので、早めの服用が勧められた。
ところが、早めの服用を繰り返すうちに、血管が収縮しやすくなり、頭痛を誘発することになったり、さらに強い薬を使い続けることで、もっとひどくなる。「薬物乱用頭痛」といい、痛みを鎮める薬でかえって痛みをこじらせている人がとても多い。
現在の片頭痛治療は、頭痛発作が始まった段階で、トリプタン製剤という薬を服用することで、痛みを完全に鎮めることができる。即効性のある注射薬もあり、自己注射の保険適用が08年に認められた。
推定では、15歳以上の8・5%─およそ840万人が片頭痛に悩まされているといわれる。中学生の20人に1人が片頭痛持ちだが、周囲の理解不足から「仮病」と誤解されることも少なくないようだ。
頭痛が心配な人はぜひ早めに専門医(「頭痛外来」)へ!